浅草橋

「浅草橋に住んでるんですよ」と言うと誰もがだいたい「うぅん?どこそれ?浅草?」という反応をする。そう言われるたびに僕は「こんな面白いところ知らないのか」と心の中でほくそ笑んでいるのだが、自分が住んでいるという贔屓眼抜きにしてもここは本当に…

雍和宫

日本的空間の一つの特徴はその「奥行き性」にあると言われる。たとえば銀座中央通りから一本入ってどこに行きつくか分からない路地をするすると歩く、たとえば明治神宮で本堂に至るまで延々と曲がりくねった道を行く、たとえば京の寺社でエントランスから日…

円明園−西洋楼遺跡

僕は北京の人間や気候はどうしても好きになれないのだが、それでも北京という場所は間違いなく独自の魅力を持っている。すなわち、皇帝のための場所という魅力である。いわゆるヒューマンスケールなどというものにとらわれることのない、まさに宇宙で一番偉…

ホテルという場所

旅ではホテルに泊まるというのも大きな楽しみである。 菊竹清則事務所で長く番頭を務めた遠藤勝勧さんという人は「実測するならどんな高級ホテルにも泊めてやる」と菊竹さんに言われて、それから泊まったホテルは全て実測をしているという。一見同じように見…

キューバ国立芸術大学

キューバという国名を聞いてチェ・ゲバラ以外を思い浮かべられる人はそういないだろう。少しおしゃれな人だと葉巻とサルサ、さらに分かる人だとハバナクラブの12年と16年・・・とそれはさておき、この国は日本のほぼ真裏にあり日本からの直行便も夏休みの限…

シャンゼリゼ劇場

ル・アーブルで大活躍だったオーギュスト・ペレだが、もうひとつだけ彼の作品を紹介させてもらおう。彼の作品はもちろんパリにもたくさんあり、すでに述べたようにエッフェル塔などかなり中心部に多く立地している。その中から今回紹介したいのはPont de l'A…

ボン・マルシェ

パリにはたくさんデパートがあって、観光客ならば一度はオペラ周辺に密集しているデパートへ足を延ばすだろう。しかし、今回紹介したいのは、それらからはかなり離れたルクセンブルグ宮殿そばに位置するボン・マルシェデパートである。パリ市内のデパートは…

Les bains des docks

ル・アーブルネタ最終回。 既に書いたようにここにはオーギュスト・ペレの作品だけでなく、オスカー・ニーマイヤーやジャン・プルーヴェといった巨匠の作品がコレクションのように建ち並んでいるわけだが、2008年8月、さらにそこに巨匠建築家の作品が加えら…

聖ジョセフ教会

前回に引き続きル・アーブルネタで。前回書いたようにこの街はオーギュスト・ペレが計画し、計画だけでなく結構な量の建物を彼自身が設計しており、住宅以外には市庁舎や学校なんかも彼の手によるものである。それらの公共施設の中でも特筆すべきなのがこの…

ル・アーブル

今回は単体の施設ではなく、とあるフランスの街について書いてみよう。ル・アーブルという日本人ならまず知らない港街がそれである。パリから高速鉄道で二時間、ノルマンディにある、一見何の変哲のないフランスの地方都市に見える。しかしこれが世界でも稀…

アンドレ・シトロエン公園

パリと言うとカフェテラスとか公園といったような屋外空間でみんながのんびりしている様子を想像される人が多いだろう。そして実際そうなのである。10度を切るような寒い日でもカフェはテラス席から埋まり、時間さえあれば公園でみんながのんびりくつろぐ、…

贖罪聖堂

三宅理一という建築史の教授が大学の設計演習でかつてこういうことを言った。「幾何学的センスのない人は建築なんかやらない方がいいです。」当時学部二年だった僕はこの「幾何学的センス」という言葉の意味がわからず、それはなんとなくその後ずっと心の中…

はじめに

僕が旅をする理由は単純である。「心地よい場所」を見つけたいのだ。この地球には1億3,564万1千平方キロメートルの土地があって、その土地はおよそ200弱の国に分割され、そこには無数の民族と文化が存在している。何万年か前のある日、人の手によって場所が…